お父さんお母さん 退職のお知らせ
2008年1月
突然のお手紙ですが、今後の自分の将来について、いま考えていることを、伝えたいと思い、お手紙を書くことにしました。
結論から先に言うと、私は退職し、フィリピンへ留学することに決めました。
これからやってくるだろう、日本の格差社会では、中流から下流に転落するのは、とても簡単なことだと思います。
事実、私が勤めている、三菱UFJニコス(旧 日本信販)でもこの度の合併で、本社勤務の一部の人を除いて、35歳以上がリストラ対象となり
男性社員の8割以上が、会社都合の退職に追い込まれました。
住宅ローンを抱えているひとや、大学受験前のお子さんを抱えている人など、会社はまったく考慮してくれませんでした。
何のスキルも持たない中年の男性社員がよい再就職口を見つけられるかどうかは、火をみるより明らかです。
終身雇用制が崩壊しているこの格差社会で、生きていくためには
個人の実力が重要視される時代になってくるのだとおもいます。
私は女だから、立派な男性を見つけて結婚すれば、将来安泰かと言われるかもしれませんが、三菱UFJニコスの社員ですら
リストラされる時代で、立派な会社員とは、どの会社のことを指すのでしょうか?
郵便局や、社会保険庁が民営化されて、市町村が経営破たんして合併していく時代で、公務員は絶対安全なのでしょうか?
年金不払いが4割に達し、これからやってくるだろう大増税時代、高齢化社会で
厚生年金の夫を見つけても、年金は必ず、全額もらえるのでしょうか?何歳から?
その夫がリストラされたら、暴力的な夫で離婚追い込まれたら?一人で生きていくならともかく、子供がいたら?
わたしのような不安を持っている女性はとても多いと思います。たぶんこれが現実日本の少子化の根本的な原因だとおもいます。
英語ぐらい話せても実力のうちには入らないかとおもいますが
わたしにとっては今後生きていくための必要最低限の必須ラインです。
グローバル化が進む日本で英語の重要性は、いくら強調しても、強調しすぎることはないと思います。
まず習得しなければいけないスキルのひとつです。
もちろん他の勉強は生涯続けなければいけないと思います。
ただ、他の勉強なら日本にいても、勤めていても、結婚していても、出来ますが、英語に関しては
日本にいては時間がかかり過ぎます。
日本じゃない国で生きていくのは大変だとおもいますが、これを乗り越えれば、どこでもどんな時でも、生きていける自信がつくと思います。
わたしとお父さんとお母さんは違う人間だし、毎朝同じ新聞をよんでも違うことを感じるはずです。
考え方はまったく違うと思います。でもわたしは30歳になって、もう子供でもありません。
10年間東京で社会人を務めて、十分に見聞も知識もあります。
反対は重々承知ですが、顔を見ると言いたいことが言えなくなってしまいそうなので、手紙にしました。
今まで大事に育てていただいて、今回の決断はとても親不孝だとおもいますが、年齢を考えてもタイミングを考えても
これが最後のチャンスだと思っています。行かなかったら、一生後悔すると思うので、決めました。
ほんとにごめんなさい。
なぜフィリピンなんだ?思われるかもしれませんが、理由は多々あります。
デメリットとメリットを相互比較して、メリットが十分に余りあるということで決めました。メリットをあげると、コストパフォーマンスが高いことがあげられます。
物価の安さから、授業料の質がとても高く、朝9時から最高、夜10時までの授業で一ヶ月間の授業料金が4万〜5万円です。
授業の半分はマンツーマンです。
欧米豪の授業が同じ料金で10人〜20人のグループレッスンで一日3時間程度なことを考えると
安価で良質な授業で実力は早くつき、短い時間の滞在期間で帰国することができます。これはわたしの年齢をかんがえると
非常に魅力的です。
そして肝心の期間ですが、最低6ヶ月、最長1年で渡航しようと思っています。ただ、フィリピンで基礎学力がついたあと
語学以外の専門(ビジネス、経営など)をまなびたいのでフィリピンで勉強しながら考えたいと思います。
正直、ここまで書いてもお父さんとお母さんに理解していただけるとは思っていません。
ただできるだけわかりやすく丁寧に説明するつもりで書きました。
気持ちをこめて本気で書きました。
だから、世間体や常識で感情的に反対しないでください。自分なりに悩んで、考え抜いた結果だからです。
心配や迷惑をかけているのはわかっています。早く結婚して、子供を生んで孫を見せてあげるのが、最大の親孝行だともわかっています。
わかっているので、わたしもすごく悩みました。
だけどもお父さんやお母さんが先にいなくなって、生んだ子供が独り立ちしたあと、自分の人生を振り返ったときに
いま頑張らなかったことが一生悔いとして残るような気がしてならないのです。
自分は出来るだけ頑張ったのだろうか?100%の力を出して生きたのだろうか?と。
結婚もしたいし、子供も欲しいです。だけど全部を今一度に出来ないし
結婚だって一人では出来ないし、じっと待ってもできません。
自分らしく生きながらそのレールの延長上に自然にあるものだと思っています。
もし相手にめぐり合えたら、その時は、流れに逆らわず、すぐにしようと思います。
わたしは、小さいときから、わがままをいったり、おねだりをしたりしたことはなかったと思います。
ですから、このわがままは許して頂きたいとおもいます。
おじいちゃんやおばあちゃんが大変な時期にすいません。
かえってきたら、かならず祖父母、親、孝行します。
この手紙を書くまで悩みました。
ですが、ここまでの自分の意思は固く決心は変わりません。
4月18日に出発しようと思っています。
相談ではなく報告になってしまったことはお詫びします。
この1年間、自分の勉強のために生きる自由を許してください。
よろしくお願いします。
と、2008年(29才)に9年務めたクレジットカード会社のOLを退職し
フィリピンに旅立ちました。
父親は厳格で古いエリートタイプの人間だったので、自分の娘がOLをやめてマニラにいくなどと、自殺級にショックだったとおもいます(笑)
(今読み起こすと幼稚な文章ですが、当時自分が感じていた“実態無き危機感”をなんとなく思い出しました)
今でも、あのとき会社を辞めたのは、人生で最良の選択だったと思います。
信じられないくらい、すばらしい出会いがあり、やめてからの7年間が私の輝ける青春時代です。
いい学校にいって、いい会社にはいって、いい会社の人と結婚すれば、一生安泰だなんて
なんか違う、そんなはずないって思いなから”不景気”のなか育ちました。
いまの若い人にも、メディアや、国、踊れ去れず、自分の頭で考えて感じて生きていってほしいです。
以前、ちきりんさんのブログの”退職メールを共有しよう”という場所でもご紹介いただきました。
いま、親の世代の価値観にとらわれ、身動きができなくなって悩んでいるいる多くの若いみなさんに読んでいただき
自分の頭で考えたことや、感じたことだけが本物で、きまった価値観に沿っていきることだけが幸せではないと
気づいてもらえるきっかけになれれば幸いです。
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